VOICE

灯油のビジネスモデルに、新しい発想を。自社ブランド初のオリジナル製品は、チャレンジの積み重ねから生まれました。

  • 北ガスジェネックス株式会社
    営業サポート部
    窓岩 昇平
  • 北ガスジェネックス株式会社
    情報システム室
    金田 英治

1 キーワードは「お客さま参加型」。
大きなきっかけとなった、苫小牧工業高等専門学校さんとの出会い。

プロジェクトのはじまりは2017年の7月頃。わずか3人のメンバーで自主的に集まって、アイデアを出し合っているようなかたちでした。当時の中心的なテーマは、旧態依然としている灯油のビジネスモデルを面白い発想で改革していきたいというもの。その中でも、もっとお客さまに参加してもらえるようなモデルが創りたかったんですね。そしてミーティングを重ねてたどり着いたのが、灯油の残量を「見える化」するというアイデアでした。

同時期にちょうど各種センサーを使って実験を行っている苫小牧工業高等専門学校さんの活動を知り、産学協働研究の申し入れを行って具体的な開発研究がスタートしました。産学協働の取り組みは弊社として2例目だったのですが、社員と学生が一丸となって地域社会の課題解決に挑戦することで、双方のさらなる成長につなげていきたいという想いもありました。

2 実験室で得られた知見と、現場の環境とのギャップ。
タンクの種類や外気温など、クリアすべき要素は様々。

試行錯誤の中で作られた試作機

苫小牧工業高等専門学校さんとは、製品開発のためにたくさんの実験を行いました。灯油の残量を「見える化」するセンサーは超音波をタンク内で発し、油面に達して戻ってくるまでの時間を計算して距離を算出しています。しかしタンクってご存知の通り、意外と幅が狭いんですね。超音波がタンクの中で反射すると、真っ直ぐに跳ね返ってくるだけではなく両脇にも当たります。この影響も計算に含めなければ正確なデータは取れないので、その実証実験にも苦労をしましたね。

また、実際にタンクが設置される環境にも配慮する必要があります。例えば、氷点下20度になった真冬の寒さや、真夏の厳しい暑さでもちゃんとセンサーが機能するのかという点ですね。実際に同じ環境でフィールド試験を行い、素材の耐性などをチェックしています。その他にもさま々なタンクキャップの種類やタンクの形状などにも対応できるよう、現場に出向いて一個一個実物を調べて数値の出し方へと反映しています。実験室での基礎研究で得られたデータを、実際に製品が活躍する環境にどのように適応させるのかというプロセスは、本当に地道なトライ&エラーの繰り返しだったと思いますね。

3 データを使って、できることはたくさんある。
お客さまの参加によって広がる、サービスの可能性。

このセンサーを使っていただくことによるメリットには、様々なものがあります。物流の課題解決という視点では、カーボンニュートラルへの対応や配送作業の負荷軽減ですね。リアルタイムで灯油タンクの残量が分かれば、配送作業にかかるコストは劇的に減らせます。例えばこれまで2回で配送していたものが、1回の配送で充分になって効率化ができます。地球環境にも働く人にもやさしい、そんなシステムといえるのではないでしょうか。

もう一点は、お客さまが一緒に参加してもらえるサービスが提供できるということ。アプリなどとの連携で、スマホやタブレットを使って日々の灯油使用量を簡単に確かめられる形式を想定しています。リアルタイムで灯油の残量を把握してもらうことで使いすぎを防ぎ、一層の省エネ意識向上にも貢献できるのではないかと考えています。

4 すでにある技術に、ビジネスとしてのアイデアをプラス。
これからも、時代のニーズに応える製品開発を。

実は今回のセンサーに活用した測定技術自体は、昔から存在している仕組みなんです。超音波で反射波を測って時間を計算するという技術は、ごくありふれているんですよね。実際の環境で活かせるように実験を重ねて、問題を解決するためのプログラムを開発し、灯油の残量を測るという製品として結実できたのは、やはり新しいアイデアから改めて技術を捉え直せたからだと思います。産学協働の研究に一緒に取り組んでくれた学生さんは、本件の実験をテーマにして卒論を書いてくれました。今回のプロジェクトをきっかけにして生まれた論文ということで、非常に感激しましたね。

今後は開発したセンサーを活用して、お客さまのためになるサービスをどんどん積極的に展開していければと考えています。まだまだ新しいアイデアはたくさんありますので、ぜひご期待ください。